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ヨーロッパ写真日和VOL.169『孤高のピアニスト、グレン・グールドの足跡をたどって』

こんにちは、吉田タイスケです。今回も前回に引き続き、秋の大自然から。カナダが生んだ20世紀を代表するピアニスト、グレン・グールドの足跡を辿ってトロント北部、スペリオル湖岸を旅してきました。

淡水湖としては世界最大、北海道よりも広い面積を誇るスペリオル湖。

グールドをテーマとしてカナダへ撮影に向かったきっかけは、別の仕事でご一緒したライターさんの携帯待受がバッハの平均律だったことです。耳慣れたメロディだけど、印象に残るパッセージ。誰が弾いてるのかを尋ねた際の答えが、グレン・グールドでした。

グールドのことは知っていましたが、ちゃんと聴いたことはなく、その携帯待受をきっかけにいろいろなアルバムを聴くようになり、すぐにバッハとグールドに魅了されることに。その演奏を一言で言うなら、ピュアでロック。しかもナイーブなイケメンでツンデレです(笑)。ファッション関係者にファンが多かったのも頷けます。

こちらは現在も宇宙飛行を続けているレコード。1977年にNASAで打ち上げた宇宙探査機ボイジャー1号、2号には地球の文化遺産として、動物の鳴き声や各ジャンルの音源をレコードに記録したものが搭載されました。グールドが弾く平均律クラヴィーア第2集第1番も、ボイジャー1号に収録されています。探査機が太陽のような恒星に近づくまで、約4万年。もう人間も存在していないかも知れない時空に響くバッハは、どんな音色に聞こえるのでしょうか。

グールドの見た世界を辿るべくやってきたカナダ。ここはトロントにあるカナダ放送協会。グールドが練習用に使っていたピアノが展示されています。

グールドが別荘で練習用に使っていたピアノ。下記動画では、有名な低い椅子に座り(父親に作ってもらいコンサートの時にも持ち歩いた)、独特の姿勢で歌いながら(こればかりは直さなかった)このピアノで練習する彼の姿を見ることができます。
曲はバッハ、パルティータ2番。これを撮りながら、「おお、あのピアノだ!」と感動している私は、ただのミーハーカメラマン(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=qB76jxBq_gQ

こちらは、グールドがトロントで住んでいたアパート。窓際にグランドピアノを置いて、床板はコーヒーのシミが抽象絵画のように広がっていたと当時を知る人が話していました。
ちなみにカーテンは一日中閉め切って、テラスは使うことがなかったそうです。食事は向かいにある24時間営業のカフェで、いつも同じメニュー、、。

グールドが通ったカフェ「Fran’s」は、今でもそのアパート前で営業しています。

Fran’s Restaurant and Bar
https://www.fransrestaurant.com

ハンチング帽を被り、厚手のロングコートに厚手の手袋を一年中身につけていたグールド。毎日同じカフェに通い、食べていたメニューがこちら。トーストとスクランブルエッグ。ゆかりのカフェで食べてみましたが、うん、、普通にトーストと卵です(←そりゃそうだ)。

トロントから車で北に10時間。スペリオル湖岸にある人口3000人の小さな村、ワワ。現地語で「澄んだ水の湧く場所」を意味するこの場所をグールドは好み、毎年夏に訪れていました。

宿泊はいつも同じ小さなモーテルの同じ部屋。偉人伝でよく言われることですが、同じ習慣を偏執的に繰り返すところがグールドにも多く見られます。自分も家具の位置や習慣を変えることに抵抗はありますが、それはただ単に面倒なだけかも、、。

ワワを南に下った、スペリオル湖岸のサンディビーチ。

グールドは「南」より「北」を志向していました。厳しい自然の中にだけある、何か研ぎ澄まされたものを探していたように思います。
確かに熱帯植物よりも、北の森に咲く一輪の花の方がピュアなイメージ、、、(←極端な例)。この静かな浜辺を眺めていると、グールドがこの地に求めた霊性的体験を感じられるような気がしてきます。

グレン・グールドゆかりの地をいろいろと廻りましたが最後に、グールドの祖父母が住んでいたトロント近郊の街の教会から。

この教会でグールドは5歳の時に、自作の曲で初演奏を披露しました。もうそのピアノは残っていませんが、ここへ立ち寄った記念、教会にあるピアノでゴルトベルク変奏曲のアリアを弾かせてもらったのが、カナダ旅行の良い思い出です(←いやいや、仕事ですから。撮影してください)。

次回は再びパリへ。街を彩るクリスマスデコレーションを紹介します。どうぞお楽しみに。

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