マディソンです。 2月極寒のニューヨーク、ただ今ファッションウィークです。
ハリウッド1の敏腕PRウーマン、ケリー・カトーがプロデュースした若手新進デザイナーのホーガン・マクラーレンのコレクションが、2月7日にソーホー地区のインダストリアで行われました。インダストリアはブルックリンを中心に広がってきているイベントスペースで、私にとっては今回のショーが初めてでした。
バックステージ・パスです。
これが無いとバックステージ、入れません。私がバックステージから参加したのは8番のホーガンからだったんですが、やはりケリー・カトーがプロデューサーを務めた午前中のジリ・カーファーの部門では、80年代を風靡した超がつくトップモデルも起用されていました。
この、テッドが髪を整えている女性がポーリーナ・ポリスコワ。80年代にはありとあらゆる大手コスメ製品のコマーシャルに起用されていた女性です。
ショーのリハーサルのために、舞台袖に並ぶモデルたち。
最近の傾向として、精巧な刺繍が施されているデザインが目立ちます。その一方でユニセックスな服もトレンドだということなので、あえて女性用とした場合にはかなりフェミニン仕様になるということでしょうか。
今年面白いと思ったのがラグ&ボーンのコレクションで、”近未来には男性ものと女性ものの代わりに人ものとロボットものになるのかもしれない”そんな兆しを感じさせてくれました。2019年秋冬物コレクションのテーマは“最後の晩餐”で、ブルックリンのザ・ウェイリンでのディナー・パーティには50名の招待客に合わせてAI(人工知能)も招待されたそうです。
今回のショーに合わせて、テッドは彼の新製品のスターリングのプロモーションも開始しています。スターリングというのは“主演する”という意味なんですが、今回集まったモデルさんたちを主演者たちと銘打って、彼女たちの名前がバックステージスタッフにわかるよう、パネルを作成しました。
アマゾン専売の彼のスターリング・ムースは、バックステージでは必須として、プロのヘアスタイリスト達に大人気です。この2月末にハリウッドにオープン予定の彼のヘアサロンは最新のテクノロジーを駆使したスマートサロンとWWD(ウィメンズ・ウエア・デイリー誌)にフィーチャーされています。
最後の準備に入るヘアスタイリスト達。その傍ら、テッドのパートナーで、バックステージのマネージャーを務めるジェイソンと、スタイリストがヘアの分け目についてディープなディスカッションをしています。どうやら、分け目の角度が数度前に来ていなければドレスのイメージにそぐわない模様です。
時間も迫ってきているので、バックステージに緊張が走っています。
近頃ではインスタグラムなどソーシャルネットワークの発達で、コレクションがこのように瞬時に世界に伝わってしまいます。
昔のように半年後にデパートに並ぶコレクションを心待ちにする人など最早いないのでは、今発表したコレクションは、今売らなければならないのでは…そんな強迫観念がデザイナーの間に広がっているんです。その背景には、ZaraやH&Mといわれるファストファッションの台頭で、コレクションで成功したスタイルが、その30%以下の価格で、彼らに即座に真似されてしまい、半年後には古臭く映ってしまうというデザイナーたちのジレンマがあるといいます。
一年近くをかけた入念な調査の後に、それでもニューヨーク・ファッションウイークの母体のCFDA (The Council of Fashion Designers of America, Inc)は、ひとまず半年先を目指したコレクション開催を続けると発表しました。この発表に不服ということで、トミー・ヒルフィガーやザック・ポーゼンはファッションウイークから脱退してしまいましたし、カルバン・クラインは今のところ参加延期となっています。
無事ショーが成功して一息ついているバックステージのテッド・チームのみなさん。良かったですね。
ところで今回のNYFWの間に、今ジュエリー・デザイナーたちの間で流行りのプライベート・プレゼンテーションにも行ってきました。
こじんまりした会場か著名個人の自宅に友人知人を集めてもらって、そこにコレクションを持ち寄るというスタイルです。ランウェイで通り過ぎるよりも、このスタイルだとじっくり見ることができます。ジュエリーの場合には特に手に取って自分の身に着けてみることもでき、お得意さまとの繋がりも密になるとのことで、近年ニューヨークでは広がりを見せています。
写真はCNNでも紹介されたブロークン・シャンデリアという名前のネックレスです。
タイで生まれ、西海岸で建築を専攻したという異色のジュエリー・デザイナー、ジョー・ジョエルビートルのこのコレクションは、今回のNYFW開催中にロックフェラーセンターでプレゼンテーション形式で行われました。
彼のブランドのジョー・ヴィライヴァンは、初期の頃こそファッションウィークで披露されていたものの、近年はプレゼンテーション形式に集中しているんだそうです。
2013年には映画“OZはじまりの戦い”でディズニーとコラボして、そのパワフルな作品で参加しました。彼のイヤリングは150㌦―450㌦、ネックレスが250㌦から3200㌦という価格帯で、ゴージャスではありながらもハイブランドジョエリーのように手が届かないというわけではありません。カーダシアン家の次女のクロエ・カーダシアンや、ファッション・ポリスでおなじみのジョアン・リバースらがお得意さまだそうです。
彼が手に取っているのがなんと玉虫で作ったネックレス。もちろん自然に死ぬのを待って作っているので3年ほどかかったとのこと…。
一日のショーが終わった夜のニューヨークは、まだ興奮冷めやらぬ人たちであふれていて、お祭り気分がなかなか抜けません。やはり、見てしまうとすぐ着たくなるのが人情のような気はしますね。半年待つことの難しさをつくづく感じました。
ジョーのジュエリーは、玉虫でもない限りは平均3ヶ月で製作できるとのことですが、それでも3ヶ月待たなくてはなりません。現代の私たちはスマホですぐにリーチできることやアマゾンですぐに手に入れることにすっかり慣れてしまって、待つということがなかなかできなくなってきているんでしょうか。
さて、如何でしたか。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。