こんにちは、マディソンです。
第一、第二、第三という三段階に分けて再開に踏み切ったニューヨーク。ようやくマンハッタンを訪れることができました。
マンハッタン中央駅ともいえるペンシルベニア駅を降りると、ひときわ目立つ壁アートがあります。
こうしたアートはミューローと呼ばれているんですが、コロナ・パンデミックとそれに続くブラックライブズマターで、今は街中にミューローがあふれています。
写真のミューローは、医療崩壊にさらされたブロンクス病院の看護婦さんたちの勇気をたたえていますが、その一方で“マスクしましょう”のメッセージにもなっているんです。
ただ今、ニューヨークではマスクはあらゆる場所でマスト、つまり義務付けられています。
これは地下鉄への入り口に建てられたものですが、銀行、レストラン、書店、全てのショップの入り口に“要マスク”と書かれています。
夏のマンハッタンは通常、観光客でにぎわっているんですが、今年は渡航禁止で入れませんから、すっかりすいています。それでも通りを歩く人々がしっかりマスクをしていて、なんだか不思議な感じがします。というのも、花粉症対策に敏感な日本と違って、アメリカではこれまで、花粉の時期でもマスクをしている人を見ることが全くありませんでしたから。
マスクはレストランの厨房の中、医療実験に携わる人々、歯科医、外科医など限られた人々が身に着けるもの、という認識だったと思います。コロナ感染状況がいろいろ明らかになってきて、無症状でも感染させてしまうとわかったので、政府もマスク着用を義務付けなくてはならないと判断したんでしょう。
渋谷のハチ公もマスクをしているそうですが、ここニューヨーク公立図書館前のライオンたちもマスクしています。
2011年に百歳ということは現在は百歳以上になったこのライオンたち。
元々は公立図書館の母体となった図書館にちなんで、アスターとレノックスという名前でした。
それが30年代に入って、当時のNY市長のフィオレロ・ラガーディア氏が、忍耐(Patience) と不屈(Fortitude)に改名したそうです。なんだか勇ましい名前になってしまいましたね。
ギリシアの文献では、ライオンは眠るときも目を開けたまま眠ると信じられていました。実際には片目だけ開けて眠ることができるそうなんですが、ギリシア以来、その性質が寓話となって、見張り番的に重要な建物の表に飾られることとなったそうです。寓話は進化して今では“魔除け”という意味合いも含まれてきているそうなので、日本のアマビエ同様、ただ今のコロナ下にピッタリといえそうですね。
観光客がいなくなって、一番打撃を受けているのはブロードウェイかもしれません。年内は再開しないそうです。
2018年から2019年の統計によると、チケット購入者のうちの観光客の割合は65%以上だったそうです。そのうち5人に一人は海外からでした。
劇場の設備は100年以上も古い建物で、とてもソーシャルディスタンスが保てるつくりにはなっていない為、2021年の1月3日まではクローズが決定しているんだそうです。
ブロードウェイは実は、9月11日のテロリストによる貿易センタービル倒壊の時にも観光客激減を体験しています。あの折には海外からの観光客が通常通りニューヨークに戻ってくるまで何と4年間もかかったそうですが、今回はどうなることやら…。
夏なので、バーの方は平日のお昼でも賑わっているようです。
エアコンからの風に感染の危険があると報道されてしまったので、マンハッタン内では屋内での飲食はありません。街のあちこちに、パラソルでこんな風に臨時のテラス席がしつらえてあります。ただマンハッタンの夏は暑く、気温も37度以上なので、外では楽しく食事を楽しむどにはくつろげません。アルコールなら別かもしれませんが…。
ロックフェラセンター裏側にある。アンソロポロジーの夏らしいディスプレイです。
アンソロポロジーというのは人類学という意味で、マンハッタンでは30~40代に大人気の、日本未上陸ブランドなんです。1992年、ペンシルバニア州のウエイン市に第一号店がスタートして以来、セレブにも大人気です。
スカーレット・ヨハンソンがドレスを着ているのを目撃されていたり、テイラー・スイフトがインスタに髪留めをあげていたりしています。ジェニファーロペスはアンソロポロジーのマグカップが大のお気に入りのようで、何点も少しだけデザインの違うカップを、雑誌の特集でくつろぎアイテムとして紹介していました。
一見したところ、フレンチのフェミニンさが漂ってきてフランスのブランドかな?とも感じるんですが、アメリカのブランド“アーバンアウトフィッターズ”が母体です。アーバンの方のターゲット年齢層が18~25歳ということで、その上の25~45歳をターゲットにした、お姉さんブランドでした。
“ありきたりの日常から飛び出す”というのがコンセプトらしく、店内に一歩入ると洗練された音楽や香りで、服のデザインを選ぶ以上に気持ちが弾んできます。マンハッタンに住む旅好きの30代女性は、かなりの確率でアンソロポロジーが大好きという説もあるくらい。
5番街のセントパトリック大聖堂に面したアトラス像にも、マスクが。
リー・ローリーという彫刻家が制作して、1937年に設置された像です。
アールデコ調なので、ロックフェラ―センター全体との統一感がありますが、センター内では一番大きな彫刻で、14メートルも高さがあります。
アトラスが肩に載せている、アーチ型の天球技の南北軸は、ニューヨーク市からの北極星の位置を指し示しているそうです。
巨大になりすぎた政府を縮小して、建国の精神に立ち返ってもっと自由なアメリカに戻そうとアメリカでは2009年にティーパーティ運動が起きました。その運動を起こしたリバタリアン達の、バイブルともいえるアイン・ランドによる小説が“肩をすくめるアトラス。
”この像がアイン・ランドが確立したオブジェクティビズムという思想の象徴とも言われている原因は、そもそも初めてのお披露目の時にさかのぼります。
1937年のその時、この像がムッソリーニに似ていると言い出す人がいました。その後、ジェームズ・フラッグという画家が、“ムッソリーニがそのように見えると思っているように見える”と謎々のような言葉を発言、以来この像がオブジェクティビズムの象徴になったと言われています。
今一番注目されている運動というと、ブラックライブズマター。アトラス像前から北に5番街を上がった、トランプタワー前の通りに黄色で巨大文字が書かれています。
今回世界中にブラックライブズマターが知られるきっかけとなったのは、ジョージ・フロイドさんがミネアポリスの警察官に殺害されたことが発端でした。抗議デモには1500万人から2600万人が参加して、全米でも最大規模のデモとなったそうです。
また、6月の世論調査では人種性別を問わず、大半のアメリカ人が運動に賛同を示していることが報告されています。
ブラックライブズマター運動自体は、2012年2月に、アフリカ系アメリカ人ティーンエイジャーの、トレイボン・マーティーンが射殺されたことが、そもそもの発端だそうです。翌年、ソーシャルメディアを通じて、ハッシュタグ・ブラックライブズマターの文字が全米に拡散し、以来警察のアフリカ系アメリカ人への暴力に対抗して抗議デモを行ってきました。
今回のデモではNY市長の娘さんも抗議デモに参加して、一時逮捕されたことも報道されていて驚きました。
トランプタワーから北に5番街を数ブロック、セントラルパーク沿いにある5つ星ホテルのプラザ・ホテル。
この中でミーティングの予定なんですが、実はホテル自体はまだ再開していないんです。いつもなら、表玄関前でタクシーを降りようとすると制服のドアマンが走り寄ってドアを開けてくれるんですが、ドアはほとんどしまっていて、かろうじて一つ開いていてセキュリティ管理者の横を通って入ります。
一泊45000㌦というゴージャスな部屋も用意されているラグジュアリーホテルなので、通常でしたら、玄関を入ると背の高いフラワーアレンジメントが正面に置かれていました。
その奥にはこの、アフタヌーンティーで有名なパームコートというカフェ。屋内なのに、もちろん本物のパームツリーで、さすが5つ星、冬でも南国気分を味わいながら、ゆっくりできるようにしつらえてあるんです。
全く誰も座っていないホテルのロビーを通るとき、何故だか映画“タイタニック”を思い出しました…。
さて、如何でしたか。
再開はしたものの、観光客のいない夏のマンハッタンは火が消えたような静けさ。良いことといえば、交通渋滞が全くなくなったことぐらいでしょうか。
医療崩壊が現実に起きて、アメリカでも最大数の被害が出てしまったニューヨーク州は再開にも慎重で、最後の方になってようやく段階的にあけるという方法を取りました。
早めに開けた州の感染者数が増えてきている為、それら31州から入ってくる人々には現在2週間の自粛が義務付けられていますし、それらの州から来る情報を提供しない場合には2000㌦の罰金も辞さない構えです。
コロナが早く収束して、タイムズスクエアも、早く元通りの賑わいを見せてほしいです。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。