今日は、マディソンです。
8月29日の土曜日、ようやくメトロポリタン美術館が再開しました!
今年はせっかくの150周年記念年なのに、コロナで記念行事らしきものがほとんど叶わず、
美術館側もこれまで全く経験のない対応に追われてしまっていたようです。
それなのに、再開にあたって、11ブランドとのコラボレーション企画を追加するなんて流石です。
今回はニューヨーカーお馴染みのそれらコラボブランドについて、前後編に分けてご紹介していきますね。
(写真:メトロポリタン美術館)
メトロポリタン美術館のシグニチャー・カラーの赤で150周年記念のペンというコラボを果たした第一号は、アクメ・スタジオ(Acme Studio)です。
エイドリアン・オーラブレイニアガとその奥さんのレスリー・ベイリーが、1985年にカリフォルニアで立ち上げました。
エットレ・ソッタスが1980年12月のある夜、若いインテリア・デザイナーのグループを自宅に招いて、家具デザインの在り方についてディスカッションしたことが発端となり、
奇抜でカラフルな家具を次々世界中に発表し続けたイタリアのデザイン・グループ、メンフィス。
80年代に世界中が熱狂したメンフィス・グループが、ジュエリーのデザインをアメリカで手掛けたのが唯一アクメ・スタジオで、そのコレクションは今ではアメリカ国内ではヒューストン市やブルックリン市の美術館で、海外ではオランダのグロニンゲン美術館やドイツのフランクフルト美術館に大切に保管されているそうです。
私の印象に強く残っているアクメ・スタジオの製品というと、ビートルズのペンですが、アンディ・ウォーホールやキース・へリングらとも過去にはコラボしているようです。
ジュエリーではなく、ペンなどの文房具に乗り出したのは1996年頃からだと聞いていますから、ビートルズのペンはその後、10年前くらいから出ている感じでしょうか。
そうそう丁度その頃、アクメ・スタジオは日本では福岡空港内にオープンしたようです。
それを皮切りに世界の他の国でも空港の中に出ているようなので、コロナが明けて海外渡航が普通になってきたら、ぜひ空港で探してみてくださいね。
(写真:メトロポリタン美術館)
こちらがニューヨークタイムズ紙が“世界一快適な靴”と太鼓判を押したオールバーズのスニーカー。
上の方の写真の踵上の部分の赤にほんの少しだけコラボ感が出ています。
日本には今年1月表参道にオープンしたそうですが、その時には開店前に長蛇の列ができたと聞きました。
オールバーズは履きやすいだけでなく、素材が木や羊毛など自然素材100%なのでサスティナブルの先頭を切っているブランドです。
元サッカー選手のティム・ブラウンと、バイオテクノロジーの専門家のジョーイ・ズウイリンガーが2014年に立ち上げました。
シリコンバレーで人気急上昇し、その後ハリウッド俳優たちの御用達になったという経緯があります。
オールバーズは元々はサンフランシスコで生まれたブランドですが、そのフラグシップはソーホーにあり、今回のメットとのコラボに繋がったようですね。
(写真:メトロポリタン美術館)
コラボ第3弾はブローバ・ウオッチ。スイス製ではなく、ジョセフ・ブローバさんがニューヨークに開いた宝飾店からスタートしたアメリカン・ブランドなんです。
メットにとってはまさにお膝元ですよね。実は2008年にシチズンが買収していて、それで日本でも少しづつ知られてきているようです。
性能の良さと、それにもかかわらず価格がリーズナブルということで、アメリカでは根強い人気があるんですよ。
通常販売されているのは大体50㌦前後、高くても100㌦を少し超えるくらいなので。
(写真:メトロポリタン美術館)
バッグではなく、バグウ。
実はバグウも、私たち日本人と少し関係があるんです。
オンライン販売でサスティナブルなトートバッグを販売開始したバグウの創業者は、日本人を父親に持つエミリー・スギハラさんという女性なんです。
しかも彼女、大学を2005年に卒業した直後の2006年にお母さんと一緒にバッグのデザインに着手、バグウ販売サイトは翌2007年に立ち上げたという若き起業家です。
2006年当時のアメリカではまだ、今ほど食料品店でのマイバッグが奨励されてはいませんでしたが、その後プラスチック・バッグが海洋生物を危険にさらすということが盛んに報道されるようになり、マイバッグ・ブームが起こりました。
そうしたサスティナブルなムーブメントを追い風に、ティーン・ヴォーグ誌に特集が組まれたりして、彼女のバッグは若いインフルエンサー達の間でクール!と人気急上昇しました。
エミリーさん自身は今もサンフランシスコでバグウ企業を運営しているそうですが、フラグ店舗はブルックリンにあります。
今回のメットとのコラボで、若者だけでなく、ニューヨークの大人たちの間でも、バグウ人気を呼びそうですね。
(写真:メトロポリタン美術館)
もちろんメット・カラーお約束の赤のバッグもありますが、他にも2色ありコラボバッグは全部で3パターンあるそうです。
(写真:メトロポリタン美術館)
5つ目のコラボ・ブランド、キャットバーズもフラグ店舗はブルックリンにあります。
ブランド名は、キャットバーズという鳥にちなんで名づけられたそうなんですが、
この鳥、鳴き声が猫がミャーオと鳴くように聞こえるからキャットバーズと名付けられていて、小さくて灰色、頭が少し黒い鳥なんだそうです。
2004年にロニー・ヴェルディが創業したキャット・バーズのジュエリーは、
ただ今イット・ジュエリーで、ブルックリンのフラグ店には、クール女子が押しかけています。
リブ・タイラーやミシエル・ウィリアムス、メーガン妃も愛用しているとインスタで話題になっています。
(写真:メトロポリタン美術館)
どうでしょう?イヤリングのダイアモンドの下のストーンの不揃いなところが、にくいほどクールですよね。
ネックレスも3連ではなく、途中で繋がっていたり…。
クール女子には予定調和は似合わないというメッセージでしょうか。
人気上昇に従って工房のデザイナーたちも忙しく、今では一日700ヶのジュエリーが製造されているそうです。
キャットバーズのフラグ店では、自身の工房のものだけでなく、他のデザイナーたちのジュエリーも扱っていて、最初の頃2006年ごろまでは工房製品の売れ行きが全体の6%程度に過ぎなかったそうです。
ところが2010年には19%に伸び、2013年に50%、今や工房製品が完全に需要の中心となってしまいました。
今では世界中のクール女子がつけている、指の関節にはめるナックル・リングを広めたのも、このキャットバーズです。
創業者のロニーがしているのを、お店のスタッフたちが真似て、それがお客さまから全米へと広がって行ったそうです。
HBOのテレビ番組“ガールズ”のシリーズパート3で、レナ・ダンハム演じるハンナがキャットバーズのリングをつけて放映された直後は、フラグ店に地元の若い女子たちが殺到しました。
さて、メットから5番街を下ってくると、ティファニー前に着きました。
婚約するとき、赤ちゃんが生まれた時、などなどアメリカ人女性の人生のさまざまな節目で活躍してきたティファニーですが、去年末からフランスの高級ブランドを多々抱えているLVMHに買収されると報道されていて、少しセンチメンタルな気分になっていたものです。
実際にはアメリカ政府とフランス政府の貿易摩擦の影響もあってか、LVMH側が買収を撤回すると発表し、ティファニー側はこれを不服として裁判で争う様相になってきています。
若いクール女子に人気のキャットバーズも頑張ってほしいですが、アメリカ女性の憧れの王道ジュエリー、ティファニーも頑張ってほしいですね。
今回前半で紹介したこの5ブランドのうち、ブローバのように創業してから145年とメットの150周年と変わらないブランドもありますが、アクメ・スタジオが80年代、キャットバーズ2004年、バグウ2006年、オールバーズ2014年創業と比較的若いブランドともメットはコラボしているんですね。
若く人気急上昇ブランドとも関わっていく、ハイブランドが新進クリエィテイブ・デザイナーを外から取り入れるように、メットも戦う姿勢を見せているところが素敵だと思います。
考えてみると老舗とはいえ、ニューヨークの美術館ですからね。
競争で、高く高く築いた摩天楼の街のパイオニア、そんなニューヨークを代表する美術館の気概が現れているんでしょう。
如何でしたか。コロナに負けないメットを、ニューヨークの街の勢いをつける再開のコラボブランドについて、次回も紹介していきますね。