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今日は、マディソンです。
コロンバス・サークルにあるアート&デザイン美術館にきています。この美術館はMADという愛称で親しまれています。
アメリカのクラフト界最大の後援者である、アイリーン・オズボーン・ウエブが組織した“アメリカン・クラフトマン・カウンシル”が中心になって、工業化で失われていくクラフトを再評価し、保存し、研究する目的で1958年、アメリカン・クラフト美術館が創設されました。1986年には一旦53丁目にあるMOMA向かいに移転しましたが、2000年にはアート&デザイン美術館と名称を変えて、アメリカ国内だけでなく世界にも目を向けて、今では工業、美術、インテリア、ファッション、ニューテクノロジー、デザイン、それにパフォーミングアートにまでその展示幅を広げています。
2008年に今のコロンバス・サークルに再オープンして以来、現代の工業アートに特化した美術館として、いつ行っても活気にあふれている美術館なんです。
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このドールハウスは、ベネチア本島にある名門の高級ホテルで、由緒ある歴史的建造物でもあるグリッティパレスをもとに作られいるそうです。今はホテルですが、元々は1525年にグリッティ家が建てたお屋敷で、ホテルとしては1948年から開業していました。ドールハウスではなく、本物のホテルの方には、チャップリンはじめ過去に宿泊した超名人のサインがたくさん飾られているそうですよ。
厨房が今もこの形で残っているのかどうかは分かりませんが、ホテルの朝食ビュッフェには各種パンやタルトのコーナーあり、多種類のヨーグルトコーナーやフルーツコーナー、たっぷりとレモンを絞ったサーモンやハムのコーナーと盛りだくさんだという噂です。
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素晴らしく精巧に作られていますね。
ドールハウスというと、子供たちが遊ぶ人形の家なんですが、第二次世界大戦後ころから大人たちの間でコレクションの対象となってきたようです。最初に作られたのは17世紀のことで、ドイツを中心にイギリスやオランダなどヨーロッパが発祥だと聞いています。ただ当時は子供の人形遊びの為に作られたわけではなく、富裕層の趣味としての細部にまでこだわった家模型で、いわば富の証だったんですね。
一番最初のドールハウスは、ベイビーハウスと呼ばれて、1558年にドイツの貴族が娘さんの為にという名目で作らせたそうなんですが、木の床も、高額な絹を使った内装も、何もかもが桁違いのぜいたくさで、結果娘さんは遊ばせてもらえず、貴族自身のコレクションとして飾られることになったそうです。このベイビーハウスを見て感銘を受けた人たちがこぞって発注して、貴族の間でブームになったんですね。
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家だけではなく、中に配置される家具もすべて精密に手作りされています。シャンデリアも、カウチも、庭のフラミンゴの飾りまで。
コレクションに集められるものは、この初期のドールハウスが多く、通常は家の中にある家、自宅のミニチュアサイズの模型だということが多いそうです。従って、当時のライフスタイルを知る絶好の資料ともなるわけです。例えば、メアリー女王のドールハウスなど、水道ばかりか温水が流れるパイプまでしつらえてあったというのだから、凄い話ですね!
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暖炉に飾られた絵も燭台も、もちろんその家のもののレプリカになっています。現存するドールハウスのうち、最も高額なのがアストラット・カスルで、8.5ミリオンダラー(約9億2700万円、1ドル109円)もの価値があるそうです。リカちゃん人形のドリームハウスが約1万円、バービーのドリームハウスが約2万円ほどなのに比べると格段の差がありますね。
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不思議な世界が広がっています。
ふと、人形の家というお芝居を想い出してしまいました。1879年イプセンによって書かれ、デンマークの王立劇場で初上映された戯曲です。弁護士のヘルメルと妻のノラは幸せな結婚背活を送っていたんですが、クリスマスイブに起きた一つの出来事をきっかけに、ノラは自身が、夫ヘルメルにとって愛玩用の人形のように扱われていたと思い知って、自立へと家を出るというあらすじです。
シェイクスピア以降、世界で一番上映されている戯曲らしく、欧米だけでなく、アジアをはじめ世界各国で女性の自立を後押しした、女性解放運動のテキスト的戯曲としても知られているんですが、どんなに精巧に作られた贅沢な家に置かれていても、自身の責任で生きる自由には勝てないという強いメッセージ性があります。
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オーナーの家をそのまま模倣しただけなのかもしれませんが、胸から上の女性像は少し不気味な感じがします、そうなると、青字に金の猫の瀬戸物像も少し…。
ちなみにドールハウスではありませんが、世界中でアクション・フィギュアのコレクターの話はよく聞きます。ハリウッドではディカプリオが、スターウォーズのフィギュア好きで知られているそうですが。変わってデミ―・ムーアはアンティーク人形をコレクションしているそうですが、一斉に並んでいる様子は少々不気味かもしれませんね…。日本でも、人形の呪いとか、髪が伸びる人形を祀っているお寺の話などよく聞きますし。
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MAD役員会会長のミシェル・コーエン。2階から一階への階段を背にしています。女性としての視点が、MADの展示にはとても強く生かされていると思いますね、さすがです。
MADではアート展示は2階から5階までです。特に4階と5階は、年2回の企画展にあてられていて、世界中からのユニークで機能的、しかもアイデア溢れるクラフト作品が展示されているんです。
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アメリカ人建築家、ブラッド・クロウフィルが設計したこの建物は地上10階建てです。外観はドイツで作られて、オランダで色付けされたセラミックタイルでおおわれていて、繊細な乳白色のグラデーションで彩られているので、光線によって表情が変わり、世界的なクラフト美術館にふさわしい趣ですね。
さて、如何でしたか。
特に9階のレストラン“ロバート”からの眺めは素晴らしく、右手にセントラルパークが広がり、眼下にはコロンバス・サークル、そしてセントラルパークの西とブロードウェイが幾何学模様を描いて枝分かれしているのが圧巻です。それなのに値段がリーズナブルで、時間によってはコーヒーを注文するだけでも座れるので、街の人気のスポットとなっているんです。
ニューヨークにいらしたら、是非訪ねてみて下さいね。