マディソンです。
バレンタインデーは2月14日ですが、大体この時期あたりに中国の新年に向けて、春節という長期休暇があります。毎年12月の10日頃に中国政府が翌年の祝日を発表するとかで、今年2024年の春節は2月10日から17日までの8日間、例年より一日多いと聞きました。
丁度2月のニューヨーク・コレクションも9日から14日で重なっているので、高級デパート “サックス・フィフス・アベニュー” のディスプレイも、それら全部を意識して、新年おめでとうの文字も入っているんでしょう。
新年のパーティにはぴったりの、ゴージャスなドレスですね。
ケイトは、創業デザイナーの名前の発音に似せてブランド名ができたと聞いていますが、袖に特徴がありますね。
下のトムフォードも、両方とも、新年のドレスというよりは、これらはバレンタイン・ディナーのドレスでしょう。
日本でバレンタイン・デーというと、女性がチョコレートを渡して意中の男性に告白する日のような位置づけですが、アメリカでは男性が女性に愛情表現を示す日で、レストラン・ディナーを招待して、バラの花やカード、チョコレートなどを送るのが定番です。ですので、女性側としてはドレスアップが要る、ということなんですね。
ただどうなんでしょう。全身が真っ赤なドレスよりも、さりげなく赤いアクセントがどこかにあった方が素敵に思えるんですが…。
FAOシュワルツは、アメリカで最も古い玩具屋さんといわれていて、創業は1862年。その最初のショップはボルチモア市にオープンしたそうです。
今では大御所感のあるトム・ハンクスが若い頃に主演した映画“ビッグ”で、一躍世界中に有名になりましたが、その後2003年には2度の破産の危機があり、映画の舞台になった5番街フラグは2004年1月とうとう閉まってしまいました。ブランド買収でオーナーは何度か変わったものの、現在のオーナー“360グループ”が2018年11月、ようやくこのロックフェラーの立地にショップを再開しました。5番街の元の場所に近いところで、再び勢いを取り戻してます。
どうやら、“自分のテディベアを作ろう”プロモーションのようですね。下の写真に飾られている詰め物を、自分の好きなテディの中に詰めるようです。
アメリカではテディベアは子供たちの友達です。世界中で人気の“クマのプーさん”の世界を思い出してください。主人公のクリストファー・ロビンは、プーさんやその他の縫いぐるみと自分だけの空想の世界を繰り広げながら育ちます。ある日小学校に上がる彼が、プーさんとの世界を卒業する場面、なんとも愛らしく、甘酸っぱく、幼児から少年へ脱皮する世界が描かれていますよね。何度読んでも、最後にプーさんがぽつんと座っているイラストのところで、思わず泣けてしまいます。
自分だけのイマジネーションの世界から、友人や先生といった他者との関わりのある世界へ。もちろんそれはやがて少年から、青年、大人になっていく為には避けられない道程なんですが、とはいえ暖かいぬいぐるみ友達とだけの世界は、そこで完全に失われてしまいます。挑戦という厳しさを乗り越えていかなくてはならないクリストファーと、その世界に残されるクマのプーさん…。
ぬいぐるみを抱きしめる少女の、この写真が暖かい世界を表現しています。
新オーナーの360グループ、FAOシュワルツというブランドの世界観とミッションを正確に把握していますね。流石です。
ブルックリンからソーホーへフラグショップを移した、近ごろ人気爆上がりパーマネント・ジュエリー“キャット・バード”のロックフェラー店も、バレンタインに向け気合が入っているようです。
そうそう男性から女性へのバレンタインのプレゼントとしては、二人がより親密な関係の場合、ジュエリーもその一つです。確かに、女性にとってはカードやチョコレートより、ジュエリーの方がはるかに嬉しいでしょうね。キャット・バードはゴールド製品が14金だということ、つまりメッキではないのに100ドル―300ドル(15,000円―45,000円、1ドル150円)という手の届く価格帯が人気の秘訣でもあります。
男女の仲が親密な場合の贈り物、もう一つありました。女性の下着です。可愛らしいものというよりはアメリカ、セクシーが主流でしょうか。
いつも思うんですが、世界の国によって美しさの定義って若干違うと思うんですね。特に男性から見た女性の美しさって文化の影響を強く受けていますから。アメリカでは美しい女性ってセクシーなんです。ベージュの木綿素材を着ていてもそれはそれで、そのセクシーさなんですが、バレンタインの頃には何故か真っ赤な下着の、いわゆるステレオタイプのセクシーさが強調される点が面白いですね。
アルドは1972年に、お隣カナダのケベック州でアルド・ベンサドゥンがスタートした、靴とアクセサリーのブランドです。今はわかりませんが、イギリス領だった名残りなんでしょう、昔カナダを訪れるとあちこちにエリザベス女王の写真が飾られていました。カナダは基本英語圏なんですが、ケベック州だけフランス語なんですね。代表都市のモントリオールはだから食べ物もおいしいし、女性たちのファッションも一味違います。
バレンタインデー・ギフトで男性から靴が贈られるというケースはまずないので、ディナー用に女性が新しい靴を買うためのプロモーションでしょう。如何にも最近の流れだと思いますが、セクシーなハイヒールと並んでスニーカーが飾られています。スニーカーはファッション・ブランドにとって新しい靴、つまり靴の一種という位置づけに最早なってはいますが、セクシーの仲間入りもとうとう果たしたということなんでしょうか。面白いですね。
とはいえ、バレンタインデー・ギフトの主流はもちろん、チョコレートです。
ラ・メゾン・ド・ショコラは1977年、パティシエ・シェフがパリにオープンしたブランドだそうです。ニューヨークには1990年頃やってきました。ショップも増え、マンハッタン内に4店舗、ブルックリンはウィリアムズ・パークに1店舗ということで、ニューヨークでの人気はすっかり定着しています。
しかし何故バレンタインデーにはチョコレートを贈るんでしょう。日本ではチョコレート企業のプロモーションの結果だと言われていますが、チョコレートは日本だけでなくバレンタインデーに世界中で贈られています。実は古代マヤ族やアステカ族の昔、チョコレートには媚薬効果があり、つまり愛情をかきたてると信じられたからだそうです。
バレンタインデーの起源はそして、西暦1200年頃のローマ皇帝の時代に遡ります。当時の皇帝クラウディウスは、結婚すると大切な人の元を離れたくなくなり、戦場に赴く兵士たちの士気がおちるという理由で結婚を禁じていました。これに反抗して殺された聖人バレンチヌスを祭る日、それがバレンタインデーなんだそうです。
なぜこれが2月の14日なのかというと、異教徒の豊穣の儀式が毎年2月に行われるので、それを廃止してカトリック信仰に戻す目的で、ローマ法王が14日を聖人をたたえる日に決めたからだそうです。その後、中世の詩人チョーサーが数々のロマンティックな詩を歌って、この日が聖人をたたえる日から、愛し合うカップルのロマンティックな日へと定着していったのだと言われています。
さて、いかがでしたか。
毎年なんとなくチョコレートをあげたりもらったりする日と、漠然と思っていたバレンタインデーですが、マンハッタンの街のさまざまな表情から、その起源や現在の祝い方など思いをはせることが出来ました。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。