今年の冬はなかなか暖かくなりません。ニューヨークの冬の風物詩の一つ、2月のファッションウィークも終わって、街はいよいよ春を待つばかりといった趣です。
さて、今回もニューヨークから、マディソンです。
お馴染み5番街のコーチ・フラグシップ店に行ってきました。久しぶりに大改装したと聞いたので。
そうなんです。この度コーチは、ニューヨークのストリート系アーティストである、キース・へリングとコラボしているんです。
近年コーチ・コレクションでは、2013年にエグゼクティブ・クリエィティブ・ディレクターに就任したスチュアート・ヴィヴァースがデザインする作品が話題になっていました。ですから今回キース作品とのコラボで、“ヴィヴァースはコーチを去るのか!?”というニュースまでメディアで取り上げられましたが、これはヴィヴァースからの、1990年に亡くなったキースと、ニューヨークの街に捧げるコレクションだと言われています。
キース・へリングというアーティストの名前は知らなくても、このダンシング・ドッグは見たことがありますよね。
彼は80年代に、ニューヨークの地下鉄で使われていない掲示板に黒い紙を張り、その上にチョークで絵を描くという、サブウェイ・ドローイングなる活動をはじめたそうです。ニューヨークだけでなく、パリやアムステルダムなど世界の街の壁画も多く描いて残しています。彼自身が感染していたこともありエイズ撲滅運動に深くかかわっていましたが、1990年まだ31歳という若さで亡くなってしまったそうです。
2018年春のコレクションのダンシング・ドッグのバック。
このバッグで街を歩いていると、それだけで楽しくなりますね。
バッグだけでなく、服の方もキースのデザインがあちこちにちりばめられていますが、春物コレクションは全部、80年代のニューヨークを表現しているとのことです。
マンハッタンのダウンタウンに住んでいるガール。そんなガールが街を闊歩する姿が思い浮かびますね。ブーツも人気です。
キースのハートは日本の相模ゴム社のコンドームのパッケージデザインにもつけられて、話題を呼びました。エイズ撲滅運動の一環だったんだと思います。彼の作品はシンプルで躍動感があり、日本でもかなり人気でしたね。確かユニクロのTシャツのデザインにもなっていたと思います。
このハートのお財布は支払いも気にならなくなりそうですし、スリッパなんて、家にいてもホカホカ楽しそうです。
5番街店長のケブンによると、今回のコレクションはダウンタウンのカジョアルさのなかにコーチ・ガールらしいエレガントさが覗く、そんなスタイルだそうです。スカートの裾の黒いレースに、そんなエレガントさが表現されてるようですね。
説明してくれた店長のケブンです。
私がお店を訪ねた土曜日の、ちょうど3日前に店内を春物コレクションに改装したとあって、店内はお客様で一杯でした。プライバシーがあるので、お客様が入らない一瞬に写真を撮るのが一苦労でしたよ。
そんな次第で写真は撮れなかったんですが、ケブンによると、ウェスタンブーツやスリップドレスの上にはおるファージャケットなどが既に大人気らしいです。
5番街のこのお店はフラグシップ店なので、2階にはバッグをカスタムにできるような縫製設備が、3階にはブテイックがあります。エレベーターが開くと、この写真にある“コーチ1941”のロゴがタイルでデザインされていました。
創業は1941年なのに、ヴィヴァースはさすが、活性化の波を次々起こしていて、次のコレクションでは何をテーマにしてくれるんだろうと、毎回ワクワクさせられますね。
店頭には、最近でこそウーバーに熾烈な戦いを強いられていますが、ニューヨークの街の象徴、イエローキャブのゴールド版が飾られていました。
ニューヨークでキャブにのると、ほぼほぼ90%外国人運転手で、英語が通じにくいことに閉口します。ウーバーはその点アメリカ人ですし、運転者自身の車なのできれいにしていて、しかもあらかじめクレジットカードに連結していますから降りるときに財布を開けて支払う手間もなく便利なんですね。
とはいえ80年代にはもちろんウーバーはありませんでしたからキャブ全盛期でしょうし、今でも映画を見ていると、イエローキャブが走っていることで一目でニューヨークだとわかる、やっぱり今でも街を象徴しているんですね。
5番街フラグシップ表にはこのゴールデン・イエローキャブと、キースのデザインが加わったストリート・ファッションが陳列されていて、ここだけ80年代のようです。
外はまだまだ寒いんですが、コーチ5番街フラグシップの、3階ブテイックは熱気で一杯でした。キースのバッグはこれから春に向けて、どんどん街中で見かけると思います。残念ながら彼自身は若くして亡くなってしまいましたが、ヴィヴァースが彼のデザインにも、ニューヨークブランド老舗コーチにも、新しい息吹を吹き込むことに成功したようです。
如何でしたか。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。