こんにちは、吉田タイスケです。霧の古城に飲まれていく子供達。今回は神隠しが頻繁に起こるという、ノルマンディー地方にある中世の城跡に探偵の日本代表として調査に参りました!、、というわけもなく、毎年9月中旬に開催される「ヨーロッパ文化遺産の日」(普段見られない施設や、美術館博物館が無料で開放される二日間)の催しの一環で、このシャトー・ダルクールで行われたアートイベントを撮影に来ました。
Chateau d’Harcourt
https://www.harcourt-normandie.fr/
入り口を入ると、すぐに40m以上あろうかという巨大な樹々に迎えられます。200年以上前から整備されてきたこの樹木園はフランスで最も古いもののひとつで、不思議な安心感がある場所です。
ベンチを貫いている若木を発見。これもアート?と思いましたが、そうではないようです。ベンチを設置した後に育ってきたのか、、。成長するにつれ、ベンチにあいた穴も大きくなっていくんでしょうか。樹木優先でいいですね。
秋の小雨がぱらつく空模様、立て看板に従って歩いていくと今回の作品が見えてきました。正直遠くから見た時は「え、これだけ?」と思いましたが、近づくにつれ、自分が体験してみるにつれ、「これだけ?」ではなくなっていきます。
アンヌ・ブランシェというアーティストの作品で、シャトーへと通じる短い橋に、霧の発生装置が仕掛けられています。15分置きにしばらく霧が発生しては、また止まる、消えるという現象が繰り返されるものです。
Anne Blanchet
http://www.anneblanchet.com/
さて、時間になるとプシューという音と共に霧が出てきます。左右の光源は、おそらくこの中を歩く人が道を迷わないように(一本道ですが、すれ違う人とぶつからないように)という配慮と霧のライトアップのためでしょうか。フランス語で霧は「Brouillard」ですが、作品の説明には「Poudre de lumiere(光の粉、光の粒)」と表現されていました。霧は「光の粉」、、気に入りました。
いつだって、こういう体験型アートを100%楽しめるのは子供達。霧が出るたびに歓声をあげて、行ったりきたり。自分はこれ、このまま歩いたらレンズが濡れるかも(霧は水なので)と躊躇していると、「これだけ?」と思っていた「光の粉」が目の前でだんだん違って見えてきました。
子供たちが霧の中に溶けていく様子を見て、何だか不安な思いに囚われます。このまま彼らが消えてしまうのでは、と思えてくるのです。
霧は視界を奪います。目の前の人間の輪郭も、前後の距離もぼやけ、大袈裟にいえば自分自身の輪郭さえ曖昧にしてしまう。誰もがこの世界に根拠なく置いている存在の信頼みたいなものを、「光の粒」は一瞬で揺らす装置になっています。
待って、この先に行ってはいけない!←何かの見過ぎです。
視界がほとんどない中で、歩いていきます。
はい、残念ながら(?)異世界には通じておらず、皆さん無事です。
しかしこの光の粉があるだけで、ずいぶんと印象が変わりますね。
敷地にも漂う霧。
全てが曖昧になっていく感覚は、なかなかに楽しいものです。光の中で曖昧になって、消失、再生するとも言えます。
Anne Blanchetのインスタレーション、どこかで見かけたらぜひ体験してみてください。
さて、せっかく来たので樹木園も少し歩いてみました。
大きく成長したベイスギ。倒れた様も迫力があります。
この日は雨ですが、それはそれで緑は深く、森の循環を感じさせてくれる気がします。
並木道。このあたりから樹木の傘でもさえぎれないほど雨足が強くなり、傘を持っていなかった自分は「こんなに雨に打たれるのは10年ぶりくらいでは?」というほどの洗礼を受けました、、。普段カメラを持ち出す時は御加護があると勝手に信じていて、絶対に雨に濡れない自信があったのですが勘違いだったようです←早く気付いて。
そして駐車場に着くと雨が止むという、だいたいお決まりのパターンです。
城下町アルクールの帰り道、良さそうなサロン・ド・テを見つけたのでひと休みに入ってみました。
Au Vieux Cadran
http://www.auvieuxcadran.fr/
時計の文字盤のことを「Cadran」というんですが、「古い文字盤」というここのお店には何があったのでしょうか。
古い家屋の外側はそのままに、サロン・ド・テとして改装しています。
暖かみのある店内。ちょっと写真が微妙だったので掲載しませんが、クレープとお茶をいただきました。←プロですよね、、?
というわけで、久々にアート作品紹介と街歩きでした。次回はフランスでは初造船、北極、南極にも到達できる砕氷客船クルーズのお披露目を撮影してきます。どうぞお楽しみに。