ライフスタイルにプラスになる、ファッショナブルな情報を発信。-abox-

721

『アールヌーヴォー発祥の地、ブリュッセルで街歩き』ヨーロッパ写真日和VOL.273

こんにちは、吉田タイスケです。冬のベルギーはブリュッセル 。レストランの前でカメラに向かって手を振っているのは、3世紀〜4世紀にローマ帝国の小アジアで大主教を務め、その善行からサンタクロースのモデルになった聖ニクラウス。写真を撮らせてと声をかけたら、飴を一個くれました。サンタさん、メルシー!

子供達にも大人気。

さて、意外とパリから近いブリュッセル。TGVなら1時間半、車でも4時間あれば到着します。パリ周辺からは、実は南仏に行くよりもベルギーやオランダの方が距離的に近いんです。この日はブリュッセルのBozarでピアノの演奏会を聴くために、車で往復8時間走ってきました(泊まりです)。


Bozar
https://www.bozar.be/en

2021の秋に行われたショパンコンクール。その優勝者ブルース・リウのコンサートが(パリより前に)ブリュッセルであるということで、煌く演奏を堪能してきました←ライブ配信にすっかりハマっていた人。

ここからが本題で、アール・ヌーヴォー建築のご紹介です。以前インドの撮影で知り合った知人がベルギー・アールヌーヴォーの代名詞的建築家、ヴィクトール・オルタが1894年に手がけた住居を数年前に購入(!)し、去年から美術館・アートセンターとして一般公開しているというのでこの機会にお邪魔させてもらいました。


Maison Frison Horta
https://visit.brussels/fr/place/Fondation-Frison-Horta

こちらは庭に続く邸宅の廊下。自然光も取り込む天井の意匠が素晴らしい。

階段ホールの照明。ここも当時のままだそうです。

階段の手すりの曲線美。壁のフレスコ画は全てオリジナルですが、傷みも激しく(そこがいいと個人的には思いますが)、全て漆喰で覆う予定。

足元のタイルの模様まで、有機的です。

案内してくれたヌプール・トロンさん。インド出身で宝石デザイナーでもあり、フランスとインドの間を取り持つさまざまなプロジェクトのコンサルタントでもあります。数年前にフランスのジュエリーメーカー、ブシュロンの撮影でお世話になり、それ以来プライベートでもお付き合いさせていただくようになりました。


Nupur Tron
https://nupurconsulting.com/

歴史遺産に指定されているこの邸宅、18年前に売りに出されたまま買い手がつかなかったところ、ヌプールさんが惚れ込み購入。数年前から自ら修復にも携わっています。

驚くべきは、ここは美術館でありながらヌプールさんの自宅でもあるというところ。

この規模で実際に人が暮らしているアールヌーヴォー建築が公開されていることはとても珍しいので、それ自体が貴重な存在となっています。

8階まで続く螺旋階段。

踊り場の一つ。馬の彫像もそれを置いている台も、オリジナルのままです。

ヨーロッパ発祥のアール・ヌーヴォーですが、自然に存在する曲線を取り入れたその意匠は日本の美術から大きく影響を受けていると言われています。それに対してヌプールは日本の美術以前に、インド美術からの影響が強いと考えていて、現在自らそれに関する本も執筆中なんです。

例えばこの壁の模様は植物をモチーフとしながらも、そこに蛇の形と動き、インドの神話の影響も読み取ることができると。そう言われると、確かに蛇がうねうねしているように見えてきます←単純。アールヌーヴォーの起源はインドだった説、楽しみです。

ダイニングに置かれたピアノも、当時を彷彿させます。

この邸宅にある家具は全て地下に保存されていたもので、数十年放置されていながらもかなり状態は良かったようです。

ステンドグラスも美しいキャビネット。

美しく、使い勝手も良さそうなコーナーテーブル。

階段から覗く、優美なメインダイニング。椅子も張り替え以外は当時のまま。

こちらの扉の把手は、、トイレのものです。

トイレの床もレトロ。我が家の台所もこんな床なので、なんとなく親近感を感じます←トイレだけど。

エントランスの手すりも鉄を加工した有機的な曲線。このヴィクトール・オルタの意匠に影響を受けたのが、パリの地下鉄のファサードなどでも有名なエクトール・ギマール。フランスを始め、各国にアールヌーヴォー運動は波及していきます。

ヴィクトール・オルタがデザインした暖炉前の衝立。住居全体から家具、小物に至るまで手がけていたんですね。

続いてアールヌーヴォー発祥の地、ベルギー・ブリュッセルで訪ねたいカフェも一軒ご紹介します。


Le CIRIO
https://lecirio.be/fr

内装は1909年に完成。当時はヴィクトル・ユーゴーや、アレクサンドル・デュマのような文豪も訪れた文化カフェ。

このシリオは当時ヨーロッパに18店舗を展開したイタリア食材小売店兼カフェの一つで、同様の店がパリやモスクワ、チューリッヒなどにもあったのですが、現存しているのはブリュッセルのみとなっています。

当時を彷彿させるランプ。

18店舗展開していた頃は、どんなイタリア食材を扱っていたのでしょうか。現在もパスタなどがメニューにありますが、もしかしたらその名残だったのかも(?)。

カメラに向けて素敵な笑顔をくれたのは、リエージュ大学で教授をしていたジャン・ミッシェルおじさん。今はグランプラスの近くに住んでいて、週に3回はこのカフェに来て同じ席に座るそうです。基本観光客が多い歴史カフェですが(自分もそうですし)、こういう常連さんが何人かいるだけで「受け継がれていくもの」がその場所にあるように思えます。

そしてヨーロッパのカフェらしく、犬もフリーパスです。よかったね。

観光客が多いカフェでありながら、メニューの値段は良心的で味も真っ当です。パンにハムとチーズを挟み、ベシャメルソースを塗ってサンドしたクロックムッシュというフランスの軽食がありますが、ここにはそのブリュッセル版「クロック・ブリュッセロワ(ハム、チーズ、チコリ、ポワロー葱)」があり、また食べたい美味しさなんです。写真はベルギーといえばの海老クリームコロッケ。アールヌーヴォーに定番グルメ、ブリュッセル街歩きをご一緒しました。次回はパリから、またファッションスナップをお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

『アールヌーヴォー発祥の地、ブリュッセルで街歩き』ヨーロッパ写真日和VOL.273Takashi -タカシ-

関連キーワード

関連記事