こんにちは、吉田タイスケです。前回に続きイタリア旅日記。今回は世界最大の聖堂であり世界遺産、西ヨーロッパのキリスト教芸術が作り上げた「美の聖地」、バチカン共和国のサン・ピエトロ大聖堂を中心にお届けいたします。
両腕を広げるように広場に設置された円柱は、その数284本。
バロック美術の巨匠、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが広場の設計を担当し、世界中から救いを求めて集まる信者を母のように両腕を広げて迎え入れる広場を作り上げました。
しかし、その母なる聖堂に迎え入れてもらうのは並大抵ではありません。また入場の話になりますが、サン・ピエトロ大聖堂(入場無料)にスムーズに入ろうと思ったら、朝7-8時には来なければいけません。うっかり朝寝坊でもしようものなら、あっという間にワタシのように入れなくなり、小雨の中3時間は並ぶことになります。自分はギブアップして、翌朝に再度来ることに。
再挑戦して早朝に入場しました。圧倒される巨大な聖堂空間には、人もまばらで撮影し放題。正面のクーポラの内輪にはマタイの福音書から「あなたはペテロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。そしてあなたに天の国の鍵を授ける」という言葉が書かれています。そして入ってすぐ右手には、、
「世界で最も美しい彫刻」と名高い、天才ミケランジェロが1499年に完成させたピエタ像(イタリア語で〈慈悲〉〈愛憐〉の意。 キリストの降架後,死体をひざの上に抱いて哀悼するマリアを表現するもの)が置かれています。
この彫刻が大理石から掘り出されたとは到底思えません。眺めていると、聖母マリアの悲しみが直接こちらに伝わってくるようです。当時この彫刻に対して言われた「マリアが母親として若すぎるだろ!」という批判に対してミケランジェロは「汚れのない処女は常にみずみずしいのだ。それを知らないのか」と答えたそうです。今なら炎上しそうな答えですが、聖母ですから、さもありなんということで、、。
さて、キリスト教徒ではなくても、ここにひとつの極点として存在する美の世界に触れることはできます。聖堂内の絵画は全てモザイクの複製画に置き換わり、オリジナルはバチカン美術館にありますが、まるで美術館の如く並んだ彫刻は全て当時のままの姿で訪問者を迎えてくれます。
サン・ピエトロ大聖堂が誇る四つの宝物を象徴する、巨大な4つの支柱。そのうちのひとつに配されているのがフェランチェスコ・モーキが手がけた「聖女ベロニカ(1632)」。彼女が手に持っているのが、ゴルゴダの丘に向かうキリストの汗をぬぐったという聖顔布です。この像の周りだけ風が起こっているかのような躍動感があります。現在でも大聖堂に保存されている聖顔布。中世時代、顕示の日には熱狂のあまり倒れる人続出だったそうですが、果たしてイエスはどんな顔をしていたのか、ちょっと気になりますね。
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「教皇アレクサンドル7世の墓(1671-1678)」。広場を設計した建築家は、類稀なる天才彫刻家でもありました。このカーテン(?)のドレープ、質感、、大理石とは思えません←何を見てもこの感想に行き着く。
羽のようなものが生えた骸骨は、言わずもがな「死」の象徴です。怖いです。
手には砂時計を持ち、「生の時間が尽きた」ことを表しています。ああ、人の一生は短いですね、、←どうした。
しかし、その死のカーテンの上に、教皇によってカトリック世界に実現される4つの美徳「慈愛」「正義」「真実」「節制」の擬人像が教皇を囲んでいます。作品の中心では俗世を超越した美徳のうちに教皇が跪いて祈っているわけですが、この彫刻への感想が並んでいるサイトに「4人の美女に囲まれて、教皇が羨ましいです!」というものがあり、イイね押しておきました。確かに教皇もこの作品の出来栄えには、きっと天国で満足していることでしょう。
こちらも迫力満点な彫刻、アレッサンドロ・アルガルディ「レオ一世とアッティラの出会い(1653)」。えっ、浮き彫り?すごすぎでしょう、と二度見する作品です。5世紀半ば、時の教皇レオ1世はフン族の首長アッティラと会見し、侵攻を食い止めたという史実をモチーフにしています。天の軍勢まで教皇に加勢していますから、これはアッティラじゃなくても勝ち目がなさそうです。
大聖堂横にある、宝物館も訪ねました。
数々の聖遺物に挟まれて、展示室中央に座する天使像になぜか目が離せません。
折れた翼。
「天使像(1673)」とあるだけで詳細はわかりません。聖堂内の彫刻と比べれば、ディティールが作り込まれているわけではないですが、今にも祈りの声、いや歌が聴こえてきそうです。
と思っていたら、これも天才芸術家ベルニーニ(広場設計者)による彫刻でした。や、やるな、、。
他には「これはドラクエで見たやつ!」と言いたくなる魔道士の杖、いやちがう、貴重な法王の杖も見られます。
宝物館を出ると、入り口近くのチャペルでは結婚式の準備が進められていました。挙式はサン・ピエトロ大聖堂で、ってすごいですね。
聖水盆を持つ天使たち。教会の巨大さがわかるスケールで、記念写真スポットになっています。
まだまだキリがない、全てが荘厳な美の聖地、サン・ピエトロ大聖堂でした。
さて、ブログはまだ続きます。この後はもうひとつの小さな聖堂へご一緒しましょう。
雨のローマを歩きます。
傘を差しながら並んで入ったのは、ローマ国立博物館マッシモ宮。
お目当てはその中にある展示室、「リウィアの庭園」です。この壁画は初代ローマ皇帝アウグストゥスの妻だった、リウィアのローマ郊外にあった別荘から出土したものです。ローマにある最も古い壁画のひとつで、年代は紀元前40年頃。今から約2000年前の壁画ということになります。この壁画は半地下にあり、庭園画が描かれた空間は夏の暑さを避けて、食事や宴に使われていたと考えられています。
描かれた絵は生き生きとしていて、とても2000年前のものとは思えません。
片隅にバラやマーガレットが咲いていたり。
黄色い実はなんでしょうか。さまざまな鳥や植物が季節を超えて描かれ、さながら桃源郷です。
顔が見えなくなっても愛嬌は残っています。
2000年前の鳥籠。
この花はなんでしょう。数十種類に及ぶ植物が描きこまれているそうです。
サン・ピエトロが世界最大の聖堂なら、こちらはキリスト教が広まるそれより以前の、小さな自然の聖堂と言えるかも知れません。誰もいない、自分だけの隠れた聖堂だと。
何の煌びやかな装飾もありませんが、耳を澄ませばザクロの葉が揺れる音、鳥たちが愛を交わすささやきが聞こえてきそうな、秘密の庭園のご紹介でした。次回はローマを離れ南に二時間、海沿いのガエータという街からグルメを中心にお届けいたします。どうぞお楽しみに。