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今日は、マディソンです。
2011年の秋冬コレクションで華々しくデビューした、ニューヨーク・ブランドのトッド・スナイダー。
アメリカンクラッシックをベースとしていながら、ブリティッシュ・テイラードも少しミックスと、かなり現代的なジェントルマン・スタイルを提唱しているんです。
そんなスナイダーのフラグシップ店はマンハッタンの26丁目、マディソン・パークに面しています。
早朝のマディソン・パークでは、ボクシングの練習に励む男性が二人。プロとは思えないんですが、真剣な眼差しでトレーニングしています。
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スナイダー・ブランドは生粋のニューヨーク発ですが、トッドが生まれ育ったのはアイオワ州の、人口わずか2000人でほとんどが農家という町。お父さんはエンジニア、お母さんはアーティストだったそうです。
トッド青年が一度州都のデモイン市を訪れた時、ラルフ・ローレンの店員さんに衝撃を受けて“この人みたいになりたい!”と強く感じたそう。
ラルフ・ローレンのスタイルは、“これぞ地位も富もあるクラッシックなアメリカ人”という感じが確かにしますね。アパーイーストサイドの5番街やマディソン街に面した高級ホテルやセレベスなどのレストランで、日曜の教会の後でブランチを楽しむファミリーを連想させます。
大学でテキスタイルやファッション・デザインを学んでいた頃、彼のあだ名はGQだったそうです。
卒業後は、何度も電話してようやく面接にこぎつけ、もちろんラルフ・ローレンに就職しました。後にJクルーに移ったんですが、彼がファッション業界で頭角を現したのがこのJクルー時代のことだったんですよ。
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瀕死の状態だったJクルーにヘッドデザイナーとして就任すると、時計ブランドのタイメックスや靴ブランドのレッドウィングとコラボすることで、ブランドに新しい風を起こしました。
一番街の話題になった出来事、そして世界中の男性たちをシビレさせたのが、CEOだったミラード・ドレクスラーや故ケイト・スペードの夫のアンディ・スペードらと組んで、当時はまだそれほどおしゃれとは言えなかったトライベッカ地区にある古いバーを購入、その重量感ある内装にレッドメイソンの靴や、トーマス・メイソンのシャツなどを揃えた“リカーストア”というショップをオープンしたことでした。
今のスナイダー・フラグの前進のようなショップですが、何せ当時の男性はおしゃれは女性的という観念に縛られていましたし、おしゃれにこだわること自体男らしくないと感じていたようです。トッドはそんな男性たちに、“男性がこだわっても男らしいものがある、それがこれだよ”と指針を示したと言えます。
Jクルーのリカーストアの方はブランド不振のあおりで、残念ながら去年の3月に閉店してしまいましたが、その世界はここ、スナイダーのフラグ店にしっかり生きています。
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体操競技の中では、男子だけの種目の鞍馬。
その起源は古代ローマに発していて、乗馬練習のための木馬運動だそうです。
それが男の世界を思わせる一方、世界中の男性の憧れ、ボクシング界の帝王モハメッド・アリの写真も飾られています。
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冒険、探検、といった言葉がつい浮かんでくる小物たち。
セレブではマシュー・マコノヒーやライアン・レイノルズらがトッド・スナイダーを愛用しているそうです。
NBA選手たちもフラグを訪れているそうで、彼らは背がとても高いので、やはりお店に来ると目立つでしょうね。
例えばスティーブ・ジョブスはファッションナブルとは言えないとは思うんですが、彼の定番スタイルとなった黒のタートルネックがありました。そもそもアメリカでタートルネックを男性に流行らせたのが、Jクルー時代のトッドだったそうです。
彼が育ったアイオワ州の男性たちは、ごつごつして男性的な人たちが多かったと思います。マンハッタンのような都会の、すっきりとした身のこなしの男性たちの中にも彼は、冒険好きな探検家を見出していたようですね。
それなのに、ディナーテーブルではそつなくふるまうジェントルマンでもある、そんな姿が彼にとっての男性ファッションの理想なのでしょう。
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トッドは次々他ブランドとのコラボを進めていきました。チャンピオンとのコラボでは、表のスタイルだけではなく、裏地の肌触りのよさにもこだわったジャケット。
ニューバランスとのコラボでは、履き心地のいいランニング用スニーカー。
同じニューヨーク・ブランドの靴、コールハーンともコラボしました。ネイビーカラーのスエードにストレードチップを組み合わせた、ドレスアップしすぎないドレス靴が出来上がっています。
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サングラスのコラボはモスコット。
近年メンズファッションといってもユニセックス化が進んで、奇抜なカラーや一見フェミニンで柔らかいカラーも多々使われています。ただ、トッドは頑ななまでに、伝統的男性の色味と形を守り続けているようですね。
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男の城にはユニセックスなヘアサロンではなくバーバーがあり、そして靴をピカピカに磨いてくれる椅子もしつらえてあります。
トッドは時々、フラグ店内のこの辺りにたって、男性客を静にただ眺めていることがあるそうです。
そうしながら、果たして男性たちは何処まで服に対して自由になれるのか、そのぎりぎりのラインは何処なのかを見極めているんだそうです。
彼が育ったアイオワ州の街は、ほとんどが大規模農家でしめられていました。
大学に進学したのは半分くらいだったそうです。
ファッションはもちろん表現の手段の一つですが、とはいえ男性のファッションは何でもありではない、そう彼は強く思っているのかもしれません。
(写真:ToddSnyder_MadSq-9411)
店内には男性的なカフェもあって、メニューには抹茶ラテに、流行のターメリック・ラテまで用意されています。
少年だったトッドが故郷アイオワで夢中になった、大人の男の世界のすべてがここにあるのでしょう。服も、靴も、サングラスのような小物も、全ては憧れの男性像に近づく道具であり、その延長に家具や部屋という舞台設定がある。
女性の華やかさを引き立てるための男性ファッションではなく、ましてや女性を惹きつけるためでもない。男性たち自身がときめくためのものなんでしょうね。
スナイダー・フラグは、それを想い出させてくれる場所だと思いました。
如何でしたか。女性とは少し趣の違う男性ファッションの世界。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。