(写真:DSCF8896 by Frances Valentine)
マディソンです。今日は私、自分の名前の由来であるマディソン街の、73丁目に来ています。
2月にオープンした、FRANCES VALENTINE(フランシス・ヴァレンタイン)のショップがあるんです。ご存知ケイト・スペードというブランドを立ち上げたケイト・フランシス・スペードが夫であるアーロン・スペードと2016年に立ち上げたブランドなんですが、ケイト・スペードという名前は名前ごと売却してしまったので、彼女の旧姓であり娘さんの名前でもあるフランシス、それに母方の祖父のミドルネームだったバレンタインを加えて命名したと聞いています。
今回ご紹介するのは、ケイト・スペードが残した、最も彼女らしいブランドのショップです。
(写真:DSCF8841 by Frances Valentine)
元々は3ヶ月のポップアップ目的で、マディソン街67丁目にショップオープンしました。ところがやはりというか凄い人気で、ポップアップが18ヶ月も長引いてしまったそうです。そこで、それならと正式にブティックを73丁目オープンすることになりました。
1000スクエアフィート(約92平方メートル)の広さの店内は、このフランシス・バレンタインというブランドだけでなくケイト・スペードも一緒に立ち上げたパートナーのエリス・アーロンズ、それにエリスの長年の友人であり著名インテリアデザイナーでもあるスティーブン・スカロフが内装を手がけました。
カラフルだけれど、ポップというよりは、誰もが幸せを感じるような温かい空間が店内に広がっています。特にエコバッグになりそうな、白地に斜めハートなんてニクイと思いませんか?柱にかかっている緑のボンボンがついている黄色時のバックも、持って歩くだけで幸せな気分になれそうです。
(写真:DSCF8772 by Frances Valentine)
(写真:DSCF8785 by Frances Valentine)
そうそう、生前ファッション誌のインタビューに答えていたケイトの自宅も、絵画やアートにあふれていましたね。マンハッタンの街をあちこち散策していた彼女が好んだのは、カラフルでおしゃれだけれど歩きやすい、そんな靴でした。
テーブルの上の花のアレンジメントも、しっかりバッグや服のカラーと連動しています。先ほどの写真の花のアレンジメントもそうでしたが。
(写真:DSCF8951 by Frances Valentine)
このショップの常連客はきっと、この辺りのタウンハウスに住むアップタウンの女性たちなんでしょう。マディソン街が地元で、ファッションだけでなくアートにも憧憬のあるセンスも意識も高い女性、ケイトのようなそんな女性像が浮かび上がってきます。
温かくおしゃれだった彼女の世界を、服やバッグだけでなく、ライフスタイルとして提唱していく、フランシス・バレンタインはそんなブランドのようですね。ケイトのDNAが、確実に息づいているショップで嬉しくなりました。
マンハッタン60丁目辺りから北にセントラルパークが広がっていますが、フランシス・バレンタインのショップから西に5番街を通ってパークに出て、90丁目まで一旦上ってみました。今日はその辺りからマディソン街をずっと下りてきてみようと思います。
マディソン街から5番街に向かうクロスタウンには、重厚なタウンハウスが立ち並んでいて、緑も多く、通りを入っただけですっかり住宅街の趣なんですね。
マディソン街を90丁目から降りてきます。
マディソン街87丁目と88丁目の間にあるジャック・ロジャースは、残念ながらコロナ以来まだ閉まったままのようですね。ジャック・ロジャースは元々、フロリダのパームビーチで、1960年にスターチしたビーチサンダルのブランドです。今では、リゾートっぽい服も出しているようですが。
クラッシック・ジャックという革底サンダルが有名で、バーグドーフなど高級デパートのほとんどで扱っています。ジョン・F・ケネディの妻ジャッキー(ジャクリーン・ケネディ・オナシス)がイタリアのカプリをバケーションで訪れた折、革底にトップのアクセントが可愛らしいこのスタイルのサンダルを大いに気に入って、フロリダ地方の知り合いの革職人に依頼して自分用に作ってもらったのが始まりだという話です。つまりその革職人がジャック・ロジャースを立ち上げたということらしいんですね。
フランシス・バレンタインの前を通って、マディソン街をかなり下りてくると、66丁目の角にフレッド・レイトンのショップがあります。
アンティーク・ジュエリーのショップですが、ここのジュエリーはアカデミー賞やエミー賞など映画やテレビの授賞式でセレブが借りて着けていることで有名です。例えば1996年のアカデミー賞の授賞式では、ニコール・キッドマンがプラダのドレスに合わせて身に着けていました。2005年のアカデミーではグウィネス・パルトロ―が、2007年にはキャメロン・ディアスもつけていましたね。アカデミーだけでなく、ゴールデン・グローブ賞の授賞式でも多々見ましたし、ニューヨークで毎年春に行われるメットガラでも多々持ち出されているようです。
映画ではもちろん、メットガラ主宰者であり有名なヴォーグ編集長のアナ・ウィンターがモデルの“プラダを着た悪魔”、テレビではマンハッタンが舞台となり世界中でヒットした“セクス・イン・ザ・シティ”らでも、ここのジュエリーが大いに登場していました。
65丁目と66丁目の間には、ご存知アルマーニのショップがあります。
世界で総資産額9.53ビリオンダラー(1兆483億円、1ドル110円)もの価値があるブランドですが、ジョルジョ・アルマーニ自身は若い頃、空軍に従事していたこともあるそうです。退役後、ショーウィンドーを飾る仕事でミラノのデパートにやとわれた彼は、その後男性服売り場に移動、そこで男性ウエアについて学んだそうです。
1973年にデザイン・ハウスをミラノに立ち上げた後、たくさんのブランドにフリーランス・デザイナーとして参加していたそうですが、2年後の75年にいよいよ自身のブランドを立ち上げたと聞いています。
今ではジョルジョだけでなく、エンポリオ・アルマーニのラインも加えて、男性服ばかりか女性用、バッグにアクセサリーと、ライフスタイル・ブランドに広げて世界のファッション業界に君臨していますが、2010年にはついにドバイに160室のゲストルームと144件のコンドミニアムを有する39階建てのホテルまで完成しています。
ロングチャンプは63丁目と64丁目の間、マディソン街を挟んでその向かい側にはエトロ、この辺りは本当に昔ながらのブティック街ですよね。
ロングチャンプと言えば、フランス・パリで1948年にスタートしたブランドですが、革のバッグが知られています。最初のスタートは何と、パイプの外側を革で覆ったのが始まりだとか。その後、パスポート・カバーやお財布など小ぶりの革製品を次々発表していったそうですが、何といってもロングチャンプというと、70年代の、革とナイロンを合わせたスーツケースですね。国外旅行が世界に広がるにしたがって、全部革で出来たラゲージより軽いロングチャンプのラゲージの方が人気を集めました。
エトロはイタリアのブランドで、日本での人気はよく知らないんですが、アメリカではペイズリー柄が富裕層に根強い人気です。ですので、マディソン街にショップはまさにピッタリですよね。
さて、如何でしたか。
マディソン街を散策しながら、ブランドの歴史に想いをはせてみました。もちろん近年マディソン街だけでなく、ダウンタウンの5番街アイアンビルの辺りや、ソーホーやミートパッキング地区の辺りにも世界ブランドはたくさん集まってきてはいます。ただニューヨークの場合元々のブランド街というとマディソン街で、高級住宅街に隣接していたこともあり、ここのショップは小ぶりで可愛く、地元密着っぽくてとっても入りやすい趣があります。ダウンタウンの方は天井も高く大型な作りになっているケースが多いんです。
レストランは一何処も一杯で、マンハッタンの街に活気が100%戻ってきていますよ。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。