マディソンです。
今回はソーホーにあるブルーミングデールズに来ています。デパートはマンハッタンの場合ミッドタウンに集中していて、ソーホーにデパートというのがピンとこないんですが、果たして中はどんな感じなんでしょうか。
ブルーミングデールズというと、アメリカ国内には全部で36店舗もあり、とはいえ世界中に知られているのはミッドタウンの方の店舗で、そちらはメイシーズと並んでニューヨークの2大有名デパートだと言われています。サックス・フィフス・アベニューやニーマン・マーカスよりはやや安価なので、高級デパートとはいうもののメイシーズに近い位置づけですね。
店内に入るとすぐに、マーク・ジェイコブスのブースがありました。ジェイコブスは1986年創業なので比較的新しい、しかも生粋のニューヨークブランドですね。実は創業時に彼を支援したのが日本のオンワード樫山だということで、彼はとっても親日的デザイナーでもあります。
ニューヨーク・デザイナーの登竜門、パーソンズを卒業後、ペリー・エリスでチーフ・デザイナーとしての腕を振るい、グランジ系デザインをスタートさせました。
確かに、ここに並んでいるどのバッグも、グランジ系デザインの名残りが感じられますね。遊び心に溢れているだけでなく、持っているだけで誰かが話しかけてくるような。アメリカではこうした製品を“カンバセーション・ピース”と言って、会話のきっかけになるアイテム、と呼んでいます。
ジェイコブスは1997年頃から2014年までの20年近くの長い間、ルイヴィトンの服飾部門のデザイナーも兼任していました。
大の親日家として知られるジェイコブス、2003年に村上隆とコラボレートしたバッグを発表しました。その結果、日本の“Kawaii(カワイィ~!)”という言葉が世界中で認知されるようになったので、カワイィ~!が広まったのは彼の功績だったんですね。このバッグたちもカワイィ~ですよね。
ZVのバッグ。ザディグ エ ヴォルテールという、パリからのブランドです。
ティエリー・ジリエが立ち上げたこのブランドは、ダイバーシティを訴えて、男性も女性も、昼も夜も、仕事場も遊びでも、どんな状況でもアート感覚あふれる服、そうして少しロックな感性を取り入れた、粗削りな服を提唱しています。
アートに啓発されたデザインということもあり、“アートこそ希望”というスローガンを掲げて、コロナ・パンデミック下の2020年5月から募金キャンペーンを開始しました。約2年後の2021年末にはなんと一億円!近くを集め、アート・コミュニティに寄付したそうです。
確かに、少々ロックで粗削りというテーマに沿っている感じはしますね。バッグの留め金はもちろん、チェーンにも。服の色合いも、近頃多いフワフワなパステル系ではなく、シャープな色合いが多いようです。
ザディグ エ ヴォルテールの創業者ジリエの右腕はセシリア・ボンストロムで、2006年からアーティステイック・ディレクターを務めています。ボンストロムは、“ゴテゴテ飾るより、省いた方が効果的”という信条の持ち主で、ジリエとのデザイン・コンビネーションが絶妙だと言われています。トレンドを追うというより、いつまでも確実に美しい彼女のデザインは、そのシルエットに独特のラインが感じられますね。
黒のジャケットも、フェイクファーのコートもロックです。ジャケットはかなり身長がないと着こなせない感じがしますが、このフェイクファーのコートは、もう少し淡い色合いか、白だったら是非ほしいですね。
パンクなスタイルを提唱するもののハートは熱く、フィランソロピー(慈善事業)にも積極的なブランドで、アーティスト達への寄付だけでなく、“ワン・ツリー・プランテッド”という植樹によって雇用を生み出す一方で洪水の被害を防ぐ団体や、“ブラック・アート・アメリカ”という黒人アーティスト達への支援団体に定期的に売り上げの一部を寄付、変わったところではロサンゼルスのダンスプロジェクトの支援もしています。
近年ファッション・ブランドは単に見栄えやスタイルを表現するだけでなく、売り上げの一部でどんな団体を支援するかで、その個性を発揮しているんです。
クープルズもクール系だと思います。
こちらもパリのブランドで2008年に、フランスでは著名なアパレルブランド、“コントワー・デ・コトニエ”創業者を父親に持つ3人の息子が立ち上げました。長男のアレキサンドルと次男のローランがデザインを担当、三男のラファエルがマーケティングを手掛けています。ブリティッシュ・ロックに刺激を受けたコレクションは、細身で、少し攻撃的なデザイン。
コンセプトがカップルなので、メンズとレディースがセットで着られる仕上がりになっています。2017年には、人気モデル エミリー・ラタコウスキーとのコラボで、バッグも発表しました。パリの若者に大人気の、今勢いあるブランドだそうです。
ダウンタウンの店舗だからでしょうか。パリのブランドが多く紹介されているようです。店内を眺めてみると、デパート自体のデコもダウンタウンに寄せていて、このレンガの壁なんてまさにそうですね。
ブティックブースは10代の若者というよりは、20代後半から30代、40代をターゲットにイメージして配置されているようです。
バッシュ、出ました。ネットフリックスの人気番組“パーフェクト・マッチ”でよく見かけます。これもパリのブランドだったんですね。
2003年にバーバラ・ボッカとシャーロン・クリーフが立ち上げたブランドですが、柔らかくフェミニンで、しかも大人なデザインが人気を呼び、2015年には高級ブランドLVMH(ルイヴィトン・モエ・ヘネシー)の傘下に入りました。以来、潤沢な資金で世界展開がしやすくなったようです。
マージュもパリから。このフロアーのブランドがみんなパリのブランドのようです。ただマージュのターゲット層は他のより少し若い感じがしますね。
マージュが提唱しているのは3P、プロダクト、ピープル、プラネットに配慮するということらしいんですが、モノ、人々、それに地球すべてにより優しくするという意味でしょうか。
創業者のジュディス・ミルグロムはパリの女性たちの気取らない装いを再発見し、それを世界にひろげたいとマージュを立ち上げました。彼女いわく“20年前にマージュを立ち上げたのは、自分自身のような女性たちのため。それはもちろんエレガントでいることと同時に、自由に自分を表現して、周囲の反対をはねのけられる女性たちなの。自分だけではないわ。私の祖母も、母も、妹もそんな女性たちの一人よ”と。
パリブランドに圧巻されたダウンタウンのブルーミングデールズですが、プーマなどお馴染みのブランドも入っていました。手前の黒やピンクのフカフカサンダル、楽しそうですね。ただ去年圧倒的人気でセレブが次々インスタに上げていた、アグのサンダルと少し似ている気もしますが…。
さて、如何でしたか。ダウンタウンのブルーミングデールズは他のミッドタウンのデパートとは一味も二味も違って、面白い品揃えだと思いました。確かにミートパッキングやソーホーというヨーロッパ的な街並みの残る地区で、その趣に惹かれてダウンタウンに住む女性たちは、嗜好がパリジェンヌたちと似ているのかもしれませんね。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょう。