マディソンです。
今日は新スタイルの家具アート・ギャラリー、フューチャー・パーフェクトに来ています。
ダウンタウンのウエストビレッジの住宅地にある、タウンハウス一軒が丸ごとギャラリーになっているんですが、通りすがりに入れるわけではなく、予め予約がいるんですね。確かに両隣が普通のお宅なので、ガヤガヤうるさいのは困るんでしょう。
写真の階段から見上げているのが、フューチャー・パーフェクト創業者のデービッド・アルファデフです。ルックスを見る限りまだ若い様子ですが、ニューヨークタイムズ紙が、彼をさして“アメリカ的デザインのチャンピオン”と呼んでいます。
このタウンハウスの内装を手掛けたのは、イギリスを代表する著名建築家のデービッド・チッパーフィールド。アルファデフが座っている階段がまさにそうで、だからこそここがフューチャー・パーフェクトのギャラリーにふさわしいと、そう彼は思ったという話でした。ちなみにマンハッタンでは他に、ブライアントパーク横の建物のザ・ブライアントも、チッパーフィールドによる建築物として知られています。
フューチャー・パーフェクトという名前にはアルファデフの思い入れが詰まっているそうです。彼が2003年にスタートした折、それまでの家具のショールーム的見せ方を、時代遅れに感じてしまったそうです。
彼によると、アーティスト達はそもそも、今現実にそこには無い何かを創造する者たちであり、つまりは完全な未来に向けて製作する人たちだということです。彼がスタートした当時には、才能を爆発させそうなアーティスト達が次々頭角を現してきていて、そんな才能をバックアップすることで、素晴らしい未来が近くなるだろうという読んで、それを自分の生業にしたかったんだそうです。
アートなので、大量生産の家具ではありません。数点しかないものに取り巻かれる暮らしは本当に贅沢で、このウェストビレッジの人たちの感性にピッタリだと思います。
フューチャー・パーフェクトはロサンゼルス、サンフランシスコ、そしてこのマンハッタンのウェストビレッジにギャラリーを展開していますが、それぞれの街の暮らしにあったデザイナー家具を置いているそうです。アート・ギャラリーなので、置かれている家具は定期的に変わります。まるで3ヶ月か半年ごとに内装を大幅に変えているかのようです。
タウンハウスは地下一階、地上4階の5階建てで、ルーフトップにバルコニーがあるんです。アメリカの住宅のつくりとして、1階はお客さまをおもてなしするスペースでパーティなどが開かれ、2階以上のスペースをプライベートにしていることがほとんどなんですが、このタウンハウスも一階にリビングスペースがあり、ベッドルームは上階にしつらえてありました。
石と緑とがガラスやメタルという無機質なものと上手く混在している、プランターのアートです。まるで生きているかのように今にも動き出しそうな感じですが、メタルを主軸に命を感じさせるというのが、やはりアートなんですね。
部屋の隅に置いておくだけで、インテリア全体に遊び感と重みが増します。
下の写真が一階、上の写真が2階で、タウンハウスなのでスペースの広さは同じなんですが、置いているアーティストの家具によって、全く印象が変わりますね。
アルファデフによると、このギャラリーを訪れる人たちはアート・コレクターであり、ここではアートが家具なのでその家具と共に生活するわけなんですが、とはいえ家具をそもそも探しに来ているわけではない、ということなんです。何も座りやすいカウチを探してはいない、ということなんですね。
好みのアートに取り巻かれて生活すること、必ずしもそれが心地良い暮らしなのかどうかはよくわかりませんが…
彼がインタビューに答えていて面白かったのが、彼自身は数ヶ月に一度内装が全代わりするノマド的(遊牧民的)生活に何の抵抗もないそうです。ところが一緒に生活しているパートナーはというと、自分の好みに統一して同じ家具に囲まれて生きることに固執したいそうで、その点がなかなか上手くはいかないらしいです。
建物や内装環境としてのハウスと、くつろぐ場所でありその場所で生活を共にする人々を内蔵している観念としてのホーム。そういう意味で考えると、フューチャー・パーフェクトはハウスということなんでしょうか。
この2つの写真も、間取り的には同じスペースを、別々のアーティストの家具でデザインしています。
確かにホームと呼ぶには、あまりにもプレッシャーがキツく、寛げないかもしれませんね。
このライト、まるでキノコのようで面白いでしょう。カーペットから生えてきているみたいですね。地球環境の破壊が進む世界では、生命への回帰が現代アート家具のトレンドなのかもしれません。
さて、マンネリ化しないよう定期的にギャラリーのムードを変えるためには、世界中から優れた才能あるアーティストを発掘してこなくてはなりません。
デービッドによると、伝統的にはミラノにサロン・デル・モビールというフェアがあったそうで、今でもこのフェアが世界最大のデザイナー家具ショーらしいんですが、ところがここでも例にもれずSNSが家具デザイナー業界を大きく変えてきているそうです。わざわざフェアに行かなくても、インスタやその他で、新進の才能あるデザイナーたちを発見し、直で知り合えるようになってきているということでした。
タウンハウスは主に都市にある居住区で縦に長く、横幅に限りがあるからでしょうか。一戸建てと違って、キッチンが地下にありました。パーティでのおもてなしを考えると、確かに、お客用のスペースが地下と一階というのが理想的ではあります。
フューチャー・パーフェクトを案内してくれたエリンに“今日来るなんてラッキーよ!”と言われました。というのも、テーブルに置いてあったのが、ニューヨークで一番美味しいと言われているル・ヴァンのクッキーだったからなんですね。ここのチョコチップとクルミのクッキーはとても有名です。
この辺り、ウエストビレッジのタウンハウスは、裏側に大体こじんまりしたプライベートなガーデン用ヤードがあるんですが、夜はライトアップされていて、まるでしゃれたレストランみたいな趣ですね。
このウェストビレッジのタウンハウス、以前はカサ・パーフェクトと命名されていました。カサというのはスペイン語で家という意味。よく知られているスペイン語のことわざに“ミ・カサ、エ、ツ・カサ”というのがありますが、これはスペイン語圏で誰かをお招きするときによく使う言葉だそうで、“私の家は、あなたの家でもあるんですよ、だからいつでも遊びに来てくださいね”という意味だそうです。
一方フューチャー・パーフェクトのロスアンジェラスの家具アートギャラリーの方は趣が全然違って、エルビス・プレスリーが生前所有していた豪邸がギャラリーになっているそうです。
さて、如何でしたか。
表向きは個人の住宅のタウンハウスで、その上玄関にベルが無く、予約をしていたんですがドアをたたいても誰も出てくれないので、電話で確認してようやく入ることができました。
ニューヨークではますます、不特定多数ビジネスがなくなりつつある様子です。LAの様子はわかりませんが、元エルビス・プレスリー宅へも、是非いってみたくなりました。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。